まずは、生前最後のジャンプ映像たちを。
【YouTube】201712 Yusuke Kitazawa - 下川町K40/K65
●初めての大きなケガ
冬に入ってケガをしました。
ジャンプを始めて7年、初めての大きなケガ。両腕の骨折。
右肩の球のところが粉砕骨折、左の二の腕あたりで大きな骨がキレイにパキン。
空中でスキーが外れてしまいました。
大好きな下川町で元旦に新年の初飛びを終えて、翌日の最初のジャンプでした。
空中でパキーンと音がして左スキーがどこか飛んでったのを覚えてます。
転び方は上手いほうという自負はありましたが、さすがにだめだった。
頭は守ったけど、かばった両腕が痛くて、ランディングバーンで動けなかった。
周囲の方が駆け寄ってきてくれたのは分かったけど、激痛と朦朧とした混沌の中で、状況はよく把握できなかった。
そのまま入院。腫れが引くまで待って、手術をして、数日たって落ち着いて、今に至る。
●引退するとき
さすがの自分も、ドクターヘリの中で朦朧としながら、これでもうジャンプ引退かな、、心残りは、とか。そんなこともよぎった。仕事も家庭もあるから。
心残り、、ある、、いや、もう十分やったかな、ここまで良くやった、FITにも入れてもらえた、ラージヒルでK点も越えた、地元長野での国体にも出れた、、いや、まだだ。まだ国体入賞してない、テイクオフにも全く満足出来てない、、しかしもうケガは出来ない、、
そんなことがグルグル回ってた。
●ブーツの摩耗
原因はここだったと思う。ブーツのカカト部分=ビンディングのクリップをはめるところが、長年の使用ですり減っていた。
あとでみんながいろんな道具の組合せを試してくれたみたいなんだけど、自分のブーツにしたときだけ、誰のビンディングで固定してもグラグラだったみたい。
たしかに使い倒してたブーツだった。自分自身もフルに2シーズン使っていたし、そもそもが、チームメイトがもう使わなくなったものを譲ってもらったものだった。寿命だったと思う。
それにビンディング側は問題なかった。ヒールクリップは新品で、前日取り替えたばかり。
また、冬はブーツとクリップの接点のところに雪が詰まって、クリップが半差しになることが多いけど、雪の詰まりはスタート台でドライバーで完璧にとってあった。
やはり、原因はブーツの留め具部分の摩耗だったと特定して良いと思う。
●甘かった
実は、前日にも同じく、空中で同じスキーが外れて転倒していた。そのときは大事に至らなかったけど。
原因は、ヒールクリップかブーツかの2択だった。
そこからクリップを新品に変えて、スモールヒルを数本飛んで、いちおう大丈夫だったので、ミディアムヒルに戻っていた。
依然として、ブーツの可能性もあると思っていたけど、頭の中で黙殺してしまっていた。
それは、ブーツはスペアがなかったから。替えなきゃいけないとすると、もう北海道にいる間は飛べなくなるから。
そんなことから、結局、ブーツ以外が原因であってほしい、大丈夫なはずというただの願望・心理に勝てなかった。
さらに、前日の転倒の衝撃で、保護ストラップもスキーからネジごと抜けてなくなってしまっていた。(ヒールクリップが外れても、結んだ紐で、何とかブーツとスキーを繋ぎとめてくれるもの)
ものすごい危険な状態だった。かつ、それを自分で認識していた。それなのに、ただの根拠のない願望に負けた。
だから、自業自得だったと思う。
●少しでも違ったら、飛ばない
ただ、今は現地から離れているので冷静に考えられるけど、実際の現場では心が動く。飛びたい方向に判断のバイアスがかかる。
例えば、夏の土日のジャンプ合宿。せっかくクルマで4時間かけてジャンプ台にやってきたとき、保護ストラップが外れていた。そのときどうするか。
ホームセンターに買い出しに行ったら、貴重な半日、取り付けにドリルが必要だから、1日つぶしてしまうかもしれない。さらにいろいろ手間取ったり、他の不備も見つかるかもしれない。わざわざ土日を使って来たのに、ほぼ飛べずに帰るなんて嫌だ。
そのとき、今週だけなら大丈夫じゃないか、という心理が働くのは当然のこと。今までスキー外れたことないし、とか。
その中で、「飛ばない」判断を、これまではしてこなかった。出来なかった。
しかし、今度からは飛ばないことにする。
もともと土日だけで劇的に進化する可能性は統計的には少ない。他の人のジャンプを見ながら感じられるものもあるはず。また、いつも不足してる陸トレをしても良い。
とにかく、他の選択肢を選ぶことにする。
こういった安全に関わることについては、気付いた可能性を黙殺することを、僕はもう繰り返すことはないと思う。
たとえスタート台に上がったあとでも、大会だったとしても、気が付いたなら、飛ばずに引き返す。
●運は良かった
今回はミディアムヒルで、まだ良かったかもしれない。
もう少し道具が頑張ってしまって、札幌まで持ち越してノーマルヒルで外れるよりは。
あるいは、もっと早く限界が来て、サマーラストの白馬ラージヒルで外れるよりは。
甘かったわりには、運は良かったかもしれない。
●ジャンプファンに戻る
少なくともこの冬は、ジャンプファンに戻ろうと思う。飛び始める前みたいに。ちょうどオリンピックも近い。見る楽しみがある。
女子ジャンプも、外国勢のトップ2が目立つけど、オリンピック頃には勢力図変わってくるかもしれない。
トップ2は今絶好調だけど、絶好調は普通は何ヶ月も続かない。
どんな人も、日々体型は変わる。
テクニックは同じでも、元の身体が変われば結果は変わる。
もちろんワールドクラスのアスリートなら、体重はキチッと管理して、一定に保ってくるはず。
ただ、筋肉の量や張り、関節の柔らかさなど含めて、全てを一定に保つのはものすごく困難だ。
そこのミリ単位の変化がアプローチの微妙なズレにつながって、ジャンプの調子が変わっていく。
一方で、さらちゃんはまだ試運転な感じがするし、伊藤有希選手も例年2月頃に調子のピークが来る選手だ。
だから、トップ4人の位置関係は変わる可能性があると思う。楽しみだ。
●下川町といえばここ。やない
滞在中は、毎日練習後に寄るのが日課で、楽しみだった。シュークリームとプリンとクレープとケーキとパン。非常に好き。
【2018 1/20追記】
●ナイターのコーチボックスから。この夜景を見ながら飛ぶのが本当に好き。
【2018 1/20追記】
同じく、空中でスキーが外れたことがある仲間からアドバイスもらった。
ブーツの磨耗を防ぐ方法。
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アロンアルファをブーツのピンを止める所に2日に一回程度塗ってコーティングして磨り減りにくくしてます。





