2014年10月23日木曜日

たくさん試合に出てみて感じたこと。

サマーシーズンも大詰めを迎えました。10月は、2戦続けて参加してきました。

①第10回魚沼市コスモスジャンプ大会(新潟、小出)
2014/10/5 <リザルト> 一般の部:1位(初優勝!!)

②第22回オータムジャンプ大会(富山、立山)
2014/10/12 <リザルト> 一般の部:8位

今シーズン、多くの試合で飛んでみて、あらためて、試合は練習と違うな、と感じました。

そのあたり、たくさん試合に出てみてこそ感じたことなので、書いてみたいと思います。

●試合は不調で迎えるもの
試合のときは、試合独特の心理状態というものがある気がします。

つまり、ぜひ遠くに飛びたい。絶好調のときのベストジャンプをしたいという心理がいつも以上に働きます。大切な試合なほど、そうなります。

しかし、ジャンプ競技では、いつもベストな状態でいるのはすごく難しい。アプローチのポジション、テイクオフ、、僅かな要素が、大きくパフォーマンスに影響するからです。

絶好調で本番を迎えられる試合は、そう多くはないはず。むしろ、ベストでないことの方が多いです。身体の柔らかさ、身体のキレ、肉体疲労度合い、ポジション、ジャンプ台や風との相性など、全ての要素をそろえるのは難しい。

振り返ってみても、自分のテクニックに自信があって、失敗する気なんてまるでしなくて、いつ飛んでも絶対にベストジャンプが出来るはず。なんて思える時期がどれだけあるだろうか。

だから、試合というものは、基本的には不安を抱えながら出るもの、と思っていた方がいいのかもしれないと感じました。


●試合のとき調子が悪いと混乱する
しかしながら、調子が悪い中で試合を迎えたときは、頭の中が混乱気味になりやすいと思います。

試合だからちゃんと飛びたい。でも、調子悪くていつものように飛べない。

そんなときは、どうしよう、何をどう直して、どんなイメージで、どんな動きをすればいいんだろう、逆にどんな動きはしちゃいけないんだろう、、と言った具合に、頭の中が複雑になってしまいがちです。

例えるなら、試験前で、全然勉強してないけど、でも絶対合格しなきゃだめなんだ、だから勉強しなきゃ、でも試験明日なんだけどどうしよう、みたいな感じ。

でも、試合で一番やっちゃいけないのが、頭の中が混乱したまま飛ぶことだと思います。

あれもこれも直さなきゃ、という状態だと、いざスタートゲートに座ってアプローチを滑り始めると、全て忘れてしまうことが多いです。

結局、飛び終わったあとに何をやったのか分からない。何の収穫もなしに終わってしまうことが多いです。


●悪い中でも、冷静さを保つ
そんなときにどうすれば良いのかというと、ひとつ参考になる例があります。

船木さんの例なのですが、ある本に、スランプ時の船木さんについて書かれた部分があるので、抜粋してみます。

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「船木が非凡だといえるのは、そのスランプの時期に焦りを感じることもなく、勉強の場を与えられたとプラスに考えたことだ。そのような時期での精神状態の良さは、他の選手とはまったく違うものだ。今飛べてないといっても自暴自棄にならない。すごく冷静で「今日の飛距離はトップから10m離れてもいいんです。今はそういう時期だから」と自分で納得して精神状態を健康に保っていられる。他の選手だとそういう場面では不安になるものだが、船木はそんなものを微塵も感じさせない。そのへんが初めての五輪でも金メダルを獲れた精神構造なのだろう。」(ジャパンマジック/小野学 著)
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●出来ることだけにフォーカスする
僕自身もこの夏、調子が上がらないまま、何試合も出場しました。

その中で、効果があると感じたことをまとめると、以下のようになります。先ほどの船木さんの例にならったものです。
・ベストじゃない、という自分の状態を冷静に認めること
・そして、調子が悪いので、もう難しい技術はあきらめること
・その代わり、基本技術に焦点を絞ること(FTMMや、タイミング、テレマークなど)

よって、カンタンに言うと、調子が上がらないときの試合では、自分への要求を一段階下げる感じでちょうど良い気がしました。自分の技術レベルが10とするなら、7や8を確実に出す感じです。

難しい技術は全て捨てて、やるべきことを最小限に絞る。

頭の中に描くToDoを、ベーシックなものだけに絞り、極限までシンプルにすることが良いのかなと感じています。

そして、やることを最小限に絞ったとしても、それが出来た時はかなり満足感があります。

本調子でない中でも、最低限のジャンプが出来た。安定した空中や、テレマークが出来た。やろうとしたことがちゃんと出来た。すごいじゃん、自分。といった感じです。


●そんな頭の整理は、試合独特
こういった頭の整理、割り切りは、試合独特だと思います。

練習であれば、何本も飛び直すうちに調子を上げていけば良いので、いわば10のレベルを11や12に上げるために、時に大失敗も繰り返しながら、じっくりトレーニングが出来ます。

しかし、試合は2本だけ。
かつ、必ず一定水準以上のジャンプをそろえる必要がある。目の前の1本1本に集中して、出来ることは確実にやる。そのために、頭の中を冷静に整理する。

このように、試合に向けて心理状態の落ち着けて、マインドの整理していく感覚は、試合に出て初めて感じられるものであり、このことを試合感と言うのかなと思います。


●試合には極力参加したい
この夏、朝日町、宮の森、大倉山、妙高、塩沢、白馬、小出、富山と出れる試合はほとんど出てきました。

この連戦の中で、少ない本数であっても、さらに調子が悪くても、それでもなんとか戦えるようにと試行錯誤を繰り返してみました。

結果として、一定水準でジャンプをまとめるためのポイントをつかめてきた気がします。

はっきりと感じているのは、試合と練習とでは、ジャンプに向かう時の頭の中が全く異なるということです。飛び方が全く違います。

先に書いた通りですが、
試合のときは、7や8を確実に出すぞと考えていますが、練習のときは、失敗しながら微調整して、10の技術を11、12にするぞというものです。

では、試合で確実に出すべき7、8って何なのか。

そこには自分のジャンプ技術の中で最も大切な基本と言えるものが当てはまるはずなので、それを悟るためには、自分のジャンプを振り返る必要があると思います。

自分のジャンプ技術の幹は何なのか。枝は何なのか。最低限押さえておくべきツボってどこなのか。ここは各自整理して、明確にしておくと良いと思います。そこが自分にとって、いつでも帰れる基本になるんだと思います。

だから、例え調子が悪いときも、いや、むしろそんなときだからこそ、どんなに調子悪くても絶対にやらなきゃいけない技術(=幹)ってどこなんだと。それを突き詰めた上で、どんなときでもその幹を出せる安定感は自分にはあるんだろうかと。

それが出来てようやく、一定水準のジャンプを安定して飛べるようになり、たった2本しかない試合本番でもコンスタントに結果を出せるようになると思います。

こんなことを考えるきっかけになるので、試合には出て行きたいなと思いました。


●直近2試合のハイライト
さて、最近出場した試合の模様ですが、忘れないうちに書いておきます。

①2014/10/5 第10回魚沼市コスモスジャンプ大会(新潟、小出)
ここでは、人生初優勝することが出来ました。

初めて出た大会も、ここ小出シャンツェでした(2012/5)。そのときは、一般組で最下位。

そして今回(2014/10)は、ほぼ同じメンバーがそろう中、初優勝出来ました。

やっぱり結果は素直に嬉しかったです。

ジャンプを初めて飛んだ日から約4年。大会と名のつく中で優勝出来たのは初めてです。

しかしながら、ジャンプ内容はいまいちでした。小出の台を攻略出来ずに、アプローチでいつもの重心で滑れず。最後まで全くGを感じられないほど。

このときに、上に書いたようなマインドの整理をしました。

出来ないものは出来ないと、冷たい心で整理をつけて、ToDoをFTMMとテレマークに絞ったのが勝因だったと思います。

本番では、調子が上がらない中でも、最低限の技術課題を2本ともきっちりやり切れた。それが小出の収穫でした。

あと、優勝商品は地元・魚沼産コシヒカリ。こちらは物理的な収穫でした。


②2014/10/12 第22回 オータムジャンプ大会(富山、立山)
この台のアプローチは、ゆるやかでTが長い。余市に似た印象を受けました。台としてはすごく飛びやすい感じ。

また、試合運営がすごく良心的で、時間の許すかぎり、ジャンプ台を使える状態にしておいてくれます。競技終了後から閉会式までの間、あるいは試合後の午後もジャンプ練習が出来るなど、特に僕らのように遠方から来たジャンパーにとってはありがたかったです。

自分の状態は、前週の小出よりは良く、わりと鋭い方向には飛び出せたと思いました。が、ビデオを見るとヒザが戻っていてイマイチでした。頭が潜る、悪いクセが出ていたようです。

練習では2本ほど、アプローチでグッと乗れて、K点付近まで達したジャンプもありましたが、確率が上がらず。リフトなし階段登りによる足疲労ダメージも大きく、笑

やはり、本番はFTMMだけに絞って飛んでいました。

狙い通りテレマークも決まり、同じくらいの飛距離の選手よりも、飛型点が高めだったのが嬉しかったです。

そして、富山では仲間のiwtくんが良くなってきたのが嬉しかった。

2シーズン前に、自身の優勝ジャンプでインカレ3部から2部に押し上げ、今大会では1部校の選手を上回る飛距離も出していました。今シーズン、ラージヒルを一定以上の本数飛んできた成果が出てきたのかもしれません。

3部からスタートして、1部の選手と拮抗するようになったのはすごいことだと思います。そして何より、真剣な選手は応援したくなります。

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さて、この夏は最終戦を残すのみ。11/9(日)の飯山です。

ここまで散々書いておいてあれですが、出来れば絶好調で迎えたいものです。。笑



●小出。初優勝


●富山。ゆるやかなアプローチ


●富山。頭の中はシンプルに

2014年10月2日木曜日

ヒザを戻さないテイクオフ

テイクオフでヒザを戻さない。
スキージャンパーにとって、これほど有名なテクニックはそうはないと思う。

しかし、誰もが知りながら、これはかなり難しい技術だ。

僕もジャンプを始めた頃からずっと頭にありながら、未だに実現出来ていない。

ただ、ここ数週間で少しつかんだ感覚があり、ヒザが戻りにくくなってきた。

まだまだ模索中だけど、このあたりの感覚を書き残しておこうと思う。


●テイクオフ動作中の重心位置
ヒザを戻さないポイントを一言で言うと、
・テイクオフ動作中の重心位置が適正であること
・すなわち、テイクオフ動作中も、重心を逃さないこと
これに尽きる気がした。

テイクオフでヒザを戻さないためには、重心位置をアプローチではもちろん、テイクオフ動作中も決して変えてはいけない。

つまり、
①アプローチ
②テイクオフ
のどちらの局面でも、重心を適正位置にとらえ続けることが必要だ。

①アプローチならそこそこ乗れるようになるけど、②テイクオフ動作中の重心だと、また一段階先の難しさがある。


①まずはアプローチをきちんと滑る
まずは、前段として、しっかりアプローチを滑ってこれることが必要だ。

目安として、RでGを感じられれば、ちゃんと滑れていると思う。Gが適切にかかるときは、R通過のときに、足全体(足裏、足首、股関節、太もも、ハム、、)がグーーッと重くなる感じがすると思う。

大学から始めたジャンパーとしては、これだけでかなりのレベルだと思う。K60のミディアムヒルなら、トップゲートからだと50m~K点前後まで飛べるんじゃないかと思う。

だから、まずはちゃんと背中をアプローチと並行にして、十分にヒザを入れて、顔はしっかり前を向いて、安定して滑れるようにすることが先決だ。


②テイクオフ動作中も、重心を逃さない
次STEPは、テイクオフの動作中の重心位置をキープすること。これが難しい。

アプローチではグーッとくる重たさを感じてたはずなのに、テイクオフ中はそれがなくなってしまっている。ここ1年くらいの自分はこれだったと思う。

みんなも経験がある通り、テイクオフの瞬間から空中直後まで、一瞬意識がなくなる。そして、半無意識下でのテイクオフの動作中に、重心がだいぶ後ろにずれてしまっているんだと思う。

きっとテイクオフ中には足裏にあまり圧を感じていない、というか意識が飛んで記憶にない場合も多いかもしれない。

テイクオフという全身運動に近い動作をしながら、ハイスピードの中でも重心を全く動かさないのは、かなり至難の技と思った。ここは特に動物的感覚が必要なところかもしれない。

いずれにしろ大切なのは、ヒザが戻る場合は、今の自分は動作中に重心が後ろにずれているんだと自覚して、キープする方法を考えることだと思う。


●上手くテイクオフ出来ているときの感覚
一例だけど、上手くいっているときの自分の感覚はこんな感じ。

誤解を恐れずに言えば、以前の感覚から比べると、かなり前にいく感覚に近い。

そうすると、足が抜けずに、テイクオフでもGの延長に近い感じで、足裏や足首が重くなってきて、カンテをズドンと、力強く踏みつける感覚が出てくる。すっぽ抜けているときとは、足裏感覚がまるで違う。

映像で見ても、ヒザの戻りが少なくなって、重たく踏めるのでスキーがインパクトでしなるようになる。
●[YouTube]最近のテイクオフ


<テイクオフ動作中も滑りを攻め続ける>
僕らの場合、ただスッと足を伸ばすだけだと足が抜ける。つまり、普通に立つと動作中に重心が後ろに抜けていってしまう。

だからこそ、僕らとしては前に攻める感覚にする必要があって、それでようやく重心後ろズレが是正されてくる。

僕らはあれだけヒザを戻しまくって飛び出しているわけなので、
・僕らにとっての普通は、すごく後ろ(★重要、これを自覚すること
・僕らにとっての前も、全然前じゃなくて、むしろけっこう後ろ
・僕らにとってはかなり前に重心を持っていくつもりでいないと、適正に近付かない気がした

<くれぐれも誤解のないよう>
誤解してほしくないのは、上で書いた前にいく感覚は、前にダイブする感覚では決してない。頭を前に突っ込ませるのとは全く違う。

つまり、
×(重心後ろにずれたまま)前に飛び込むのではなく
かなり攻めて前に乗り続けながら、踏むのは真下
という感じだ。

上手く乗れているときは、本当にカンテを重たく押し下げられる感じ。グーッと重たく、、足裏をカンテになすりつけるような感じ。すると、長く深く踏める感じになって、ヒザも戻らない。

とにかく、重心位置を、テイクオフの動作の最中までもキープすること。それがヒザを戻さないためのポイントだと思う。