多忙続きの社会人チームにとって、貴重な練習機会です。
今回は3連休だったこともあり、九州から東北まで、30人近く大学生が集まって、賑やかでした。
社会人チームからは4人参加。
いつも通り、久之さんから、参加者全体に、時に個別にアドバイスをいただけました。
まずは、練習風景のムービー。久之さんの指導場面も入れてます。僕自身もだいぶ復調。
[YouTube]Sep. 2019 Yusuke Kitazawa - 妙高K60
<エアブレーキを避ける>
清水さんキャンプでの基本的な指針として、"ジャンプでは抵抗を受けてはいけない"、というものがあります。
ジャンプで一番やってはいけないのが、エアブレーキを受けること。すなわち、身体やスキーを立てること。
だから、テイクオフでは、身体を起こしてはいけない。
これは、全くもって物理的に正しい。
もちろん下からの抵抗は浮力だけど、正面からの抵抗はブレーキなので、減らしたい。
<足だけ伸ばす>
そのためには、
・テイクオフでは、背中はアプローチの状態そのままに保ちながら、足だけ下に伸ばすこと
・空中では、その背中を寝かせた姿勢のまま動かないこと
これを徹底して練習すべきだといつも教えてくれる。
キャンプでは、この指針が大きな軸として、ずっとブレずにある。
今回は1年生が多かったこともあり、特にここを徹底して、繰り返し教えてくれた。
これが、今回の全体テーマだったようにも思える。
<下に力を伝える>
アプローチの上半身はそのままに、下に向かって力を伝える。
カンテに伝えるんだから、当然、力は下向き。
真下に踏み込む。
僕自身も、ずっとこの動きをしようと試行錯誤してたので、今回のキャンプはちょうど良い流れだった。
とにかく下に踏む
とにかく下に踏む
とにかく下に下に下に
上半身全く使わずに下に踏む
下に踏み込む;
足の裏からかめはめ波撃つみたいな感じ。カンテに足裏のパワーを置いてくる感じ。
2日間、全てのジャンプでこれを繰り返して、だいぶ良い形が定着してきたと思う。
<テイクオフはOK、しかし空中がNG>
テイクオフ、それから空中まで、背中のラインを変えないこと。
このテーマに対して、最後は光が見えかけたけど、、途中かなり苦しんだ。
テイクオフは問題ない。
テイクオフで背中のラインを変えないのは、僕の得意技。これはすぐに出来た。
問題はその後。
空中に入った途端に、身体が起きてしまう。
どれだけテイクオフ時の背中が寝たままでも、その直後に頭の跳ね上げが入り、空中で身体が起きる。これが直らない。
つまり、ただ下に押すだけじゃ、だめなのだ。それでは空中までは続かない。
●テイクオフはOK。あとは空中。
<空中で身体を起こさないために>
空中まで背中のラインを変えないためには、この2つも合わせて必要だと思った。
いずれも、前回からの継続課題。
(1)前もだめ
(2)空中での安心感、前傾イメージが必要
<(1)前もだめ>
身体を上に起こすのはもってのほかだけど、前にいくこと。これもだめだと言うこと。
テイクオフで前にいこうとすると、お腹を前に突き出してしまうので、そのせいで頭が上がってしまう=身体は起きてしまう。
タツノオトシゴみたいになる。

●これ。前にいくとだめなやつ。
<後ろに飛ぶ感じでちょうど良い>
昔、AUTのシュリーレンツァウアー選手が、台車を使うテイクオフシミュレーションで、後ろに飛んでるの見たことある(YouTubeだったはずなんだけど、今は見つけられなかった、、)
最初見たときは、何をためにこれをやっているのか、全く意味が分からなかった。
的はずれな、妙な映像を流して、ライバル国を混乱させようとしてるのかと思った。
●シュリーは後ろに飛んでた。
確かに、普通にしてると、真下に踏んだつもりでも、前にいきがちと思う。
少なくとも今の僕はそう。
だから、僕にとっては、後ろに幅跳びするくらいの感覚にして、ようやく真下かな、という感じだった。
そのくらいでないと、お腹を前に突き出してしまう。
これ、けっこう注意点だなと思った。
<(2)空中>
これも、前回からの継続。
空中の安心感;
前傾しても前転や分解しない感覚、自分の足でスキーをグリップしてる感覚、スキーの風圧を足で受け止めてる感覚、横風だろうと向かい風だろうと、足でスキーを抑えられる感覚。
これがないから、滑空することを避けるように、無意識に上半身を上に反らせて、身体を起こして、着陸準備をしてしまう。
やっぱり空中感覚を取り戻すことが必要。
今は徐々に飛距離も戻ってきて、フライトの安定感もそれなりにあるのだけど、まだ安心しきれていない。
ただ、かなり良いところまでは来てる。
次以降も、高めゲートで滞空時間を伸ばすのを続ける。あるいは、思い切って大きな台行ってみようかな。白馬とか。
<空中イメージ>
あと、出来るとしたらイメトレ。
頭の中でも、かなり動作をつくれる気がしている。
下に踏み込むことで、結果として腰が持ち上がって、身体にゆるやかな前回りモーメントが生まれる。それによって前傾がかかっていく。
この、前傾がかかった状態を頭の中で描きながらだと、テイクオフ後、スムーズに空中につながる。
前傾することが頭にない状態だと、いざ前傾がかかりそうになったときに、驚いて、反射的に身体を起こしてジャンプをやめてしまう。
踏み切る前に、空中の前傾を思い描いていることが、とても大切と思う。
このイメージづくりは、ジャンプ台にいなくても出来ること。というよりは、ジャンプ台に行く前にしておくべき準備だ。
<トップ選手のコピー>
あとは、他の選手の映像からヒントをもらうことも出来る。
トップ選手の中でも、自分がマネしやすいな、と思う動きの人はいるはず。
今の僕は、長野オリンピック後数年間くらいの葛西選手のイメージでいってみたい。
腰がドンッと前に押し出される訳ではないけれど、お腹を前に出さない感じをマネしたい。
[YouTube]Kasai, Noriaki - 92,5m - FIS WM 2001 Ski-jumping K90 Individual - Lahti
下に踏んだ力を脚に残し、踏んだままの形も保ちながら、スキーのトップの方に頭が近づいていく感じが良い。
<思い切りいくこと>
あとはもう1つ、自分のテーマがあった。
思い切り踏み込むこと。
これは前回の練習後、次のToDoとして挙げてたもので、テイクオフのパワーがあまりにも足りてないと思っていた。
結果として、キャンプを終えた今、踏切へのためらいはほぼなくなっている。
前回まで2、3割くらいの力だったけど、今は8割くらいまで戻せてきてる。
残り2割は、まだ空中に不安が残るので、そのぶん思い切りいけてない感じ。
ただ、飛距離はかなり戻ったし、前傾も深くなりつつある。
昨シーズンから続いた低空飛行を思えば、十分に、十分に復調の兆しが出てきた。
キャンプ初日の1本目は、恐る恐るで、26番ゲート(ほぼトップゲート)から40mくらい。
キャンプ2日目は、そのときの自分にしては力いっぱい踏み込んで、21番ゲートから54m。
ケガ後、今が一番状態が良いのは間違いなくて、もちろんまだまだなんだけど、嬉しかった。
<道のり>
1. ゲートアップ
2. ロングフライト、しかし危ない
3. 飛型つくりなおし <--前回ここ。今はOK
4. 再度ロングフライト、安定 <--★いまここ。あと2割くらい。
5. 元通り
6. もっと遠くへ
<パワーを戻せた理由>
ただ気合でパワーを出したというよりも、実はアプローチ姿勢を変えたことが大きい。
少し、腰を落としてみた。
と言っても、今までの形が、つま先にかかり気味、頭が下がり気味だったので、これで水平になったくらい。
しかし、これがすごく滑りやすいし立ちやすい。
腰を落としたおかげで、
・頭がもぐらなくなった(頭の高さが改善)
・顔の向きも、自然と前を向く(顔の向きが改善)
-->安定したし、アプローチでの窮屈感がなくなり、テイクオフでもすごくラクに、素直に立ち上がれるようになった。
長年の悪いクセ(頭が潜って、顔が下を向く)が一瞬でなくなったような感じ。
直そうと強烈に意識しなくても、腰を落とすだけで、すごくラクにそれが出来るようになった。
だめなときの滑りって、自分が滑らされてる、スキーに連れて行かれてる感じだけど、
今回は、滑りが安定したせいか、自分は止まっていて、まわりの景色だけが通り過ぎていく感覚になれた。
滑りながらも、落ち着いて、Rやカンテを待つ状況になれた。
腰を落として、でも真ん中で組むために、指先はつかむ
腰を落とすことで、意識が足裏にいく
足裏に力が溜まっていく
カーブからのカンテまで全部見えてるから、長いストロークも出せる気がしてきた
その力をそのままカンテに置いてくる
足に残った力でそのまま、スキーをグリップしてグライダー飛行
立ちやすかった。だから、思い切り踏み込めた。
<そういえば昔も>
2013夏、杉本さんに札幌の荒井山で初めて見てもらったとき、カカトに乗って滑ってこい、っていうテーマがあった。
前に突っ込みすぎだから、直すために。
今回腰を落とそうと取り組んでて、その時と同じだと思った。
ただ、その時の僕は、鋭く低く前方飛び出すことに命を賭けてた時代だったから、素直に受け入れられていなかったかもしれない。
一周まわって、ようやく活かすことができそう。6年越しに。
<どこで変わるか分からない>
腰を落とすことについては、実は9月上旬に塩沢で村田さんと5本ほど飛んできて、そのときに南魚沼少年団のコーチからアドバイスいただけた。これがすごく大きかった。
アプローチで肩とヒザがくっついて動きづらそうだから、腰を落として、肩とヒザの間に隙間あけたほうが良いと思うと。
それをやってみたらヒットしたので、今回のキャンプでも継続していた。
塩沢へは旅行のつもりで行ったし、ビデオも自分たちで撮り合うものと思っていたので、まさか現地でビデオ撮っていただいて、アドバイスまでもらえるとは全く思っていなかった。
本当に塩沢のジャンプ台は、人が温かい気がした。
これは当然予想出来なかったことで、結局、そこでもらった一言が、今の復調気配に直結してる。
Googleの当時のCEOエリック・シュミットが言ってたけど、
"You cannot plan innovation, you cannot plan invention. All you can do is try very hard to be in the right place".
本当に、どこでどう変わるかなんて、読めないし、計画出来ないことも多い。分からないものだなあと思った。
<新しい期待が持てた>
アプローチが良くなれば、元通りになるというより、従来の悪いクセを消した、新しいジャンプを目指すチャンスが生まれると思う。
これはとても大きなことで、未来への期待が持てるのは、日々の励みになると思う。
日常的なトレーニングしようという気持ちを後押ししてくれるし、合宿が楽しみになるし。
結果として、心身ともに健康に近づくのではと思った。
<その他、気づいたこと>
●アプローチでの腕の形
これまでは、肩の力を抜いて、腕はだらんと下げてた。
今回そこから変えて、腕を後ろにピーンと伸ばして張って、そのままテイクオフ終わるまでキープしたら、良かった。
トップ選手のほとんどがこうなので、試す必要ありと思ったのだ。
まず、懸念してたような、力みにつながる感覚はなかった。
さらに、ピーンと伸ばした腕は、
・身体の丸みを取り除いてくれる
・腰の丸みや、首付近の丸みを軽減してくれる
-->脚のパワーがそのままカンテに伝わりやすくなるし、方向やタイミングのズレも減る。
<参考>"スキージャンプの技術と体力(小野学著)"より
腰付近の丸みは、踏切時、下半身のパワーがうまく上半身に伝わらず、踏切の効率を損ねる。
首付近の丸みは、踏切開始時、最初に首上げ動作から始まり、タイミング、方向性の点で踏切効率を損ねる。
http://kitano-ski.com/data
<レジェンドたち>
今回の妙高には、日曜だけ石野さんがいらして、いつも通りに飛んでいた。
コーチボックスで僕のジャンプも見てくれていて、今の良かったなあと言ってもらって、嬉しかった。
石野さんは数年前に、14番ゲートから50m越えてたのを覚えてる。
今のはジャンプになってたかな、と言いながら、いつもテイクオフに鋭さがあって、スキーを決して立てない。
たぶん今67歳。
ジャンプっていつまで出来るんだろうと思うけど、そこまで出来ることを、実際に目の前で見せてくれている。
あと、我らが国井さんもそう。
56歳でラージヒル初挑戦、58歳でラージ第2戦。
船木さんも、56歳で初ラージは世界でも聞いたことがない、すごい、たぶん他にはいない、と言われてた。
こうやってLiving legends達の姿を見れるのって、すごくラッキーなことだと思う。
僕も今後何十年も、ジャンプ人生を諦めなくて良いんだと、信じさせてくれる。
<まとめと次>
今回は、とても良かった。嬉しかった。
だいぶ良くなってきた。
まだまだなんだけど、嬉しかった。
帰り道のドライブも、帰ってきてあとも、うきうき感があって、自分のジャンプの映像を見たいと思えたのが久しぶりだった。
次は、新しいことはしない。今回の定着をする。
・真下に(意識としては後ろに)踏む
・空中、ロングフライトを繰り返す(つくった空中イメージを試す)
・腰を落とすアプローチの定着をはかる(長年の悪いクセにサヨナラを)
次の合宿が楽しみ!

●久々の塩沢。ここで腰を落とすアプローチのきっかけをつかんだ。

●貸し切り。
●久之さんのレクチャー。やっぱりスキー操作って絶対に強い。
この状態から、1日でミディアムヒルスタートまで持っていく久之さんはやはりすごい。

●にぎやか。