2016年5月20日金曜日

2016GW妙高合宿 - テクニック編

新しいシーズンがスタートしました。

今シーズン最大のテーマは、テイクオフの改良!

そのためには、まずはアプローチでの重心位置を何とかしようと思ってました。テイクオフの動き方自体は、実は二の次です。


●アプローチ良し
アプローチは昨シーズンの最後に葛西選手のスタート方法をマネしてみたところ、上手くハマり、それ以降わりと良く乗れています。


一度ぐぐっと腰を落として、それから上げるスタイル。

葛西ver.では良い重心で組めるというか、これまですごく後ろで組んでいたことに気が付きました。

また、一度良い位置に乗る感覚をつかむと、その後も感覚が敏感になるというか、スキーの真上がどこなのかが感じられるようになってきました。

結果として、カーブのところでグーッとGがかかってくる機会が本当に多くなってきています。


●アプローチでは、パワーを長く蓄える
そしてアプローチを上手く滑れ始めたことで、さらに飛距離を伸ばすコツのようなものも、おぼろげに見えてきた気がしています。

ポイントは、滑りながら、重力のパワーを蓄積していくこと。

最も良かったジャンプの感覚をテキストにしておこうと思います。

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ずっとベストポジションから動かずに滑り続けると、Gの力で身体のバネがどんどん縮められていって、エネルギーがどんどん蓄えられていく感覚になる。

このときの、時間とともに、エネルギーが増大していく感じがすごく大事。

この状態では、ずっと骨盤と足裏にGの重たさを感じていて、そのままカンテに踏み込むと、バネが弾け飛ぶように飛び出せていける。

このときは加速が全く違う。上空を突き抜けて進んでいける感覚がある。
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滑りながら、Gを感じるためにはどこに重心を置けば良いのか、という場所探しをしていたら既にNG。

滑り始めの早い段階で、その場所は見つけて、そこから動かないことが、エネルギーを蓄えるためのポイント。

あるトップ選手が、上手くいったときは、アプローチからテイクオフ、空中、着地まで、ずーっと下を踏み続けている感覚、と言っていましたが、おぼろげに分かり始めた気がします。

もっとも、そんなジャンプはシーズン中に1本あるかないかで、いつもホームランを打つのは至難の技とのこと。


●レジェンドのマネ
今回の合宿では、上記のとおり、アプローチが意外とすんなり上手く組め始めたので、もう1テーマに取り組んでみました。

それは、テイクオフで手を使わずに、その後マキシマムで腕を開く。これも葛西選手のマネですが、純粋に合理的でもあります。

実際試してみても、この手を使わないテイクオフはすごく良いです。

アプローチでGをとらえているからこそ出来るのですが、手を使わないと、エアブレーキがないので推進力が出て、上空を突き抜けていけます。(カンテ付近が追い風でも、あまり気にならなくなる)


●手を使わないテイクオフの良さ2つ
テイクオフで手を使わない良さは、2つある気がしました。

①エアブレーキが少ない(水平方向に進む)
②重心が浮かない(鉛直方向にパワーを加えやすい)

これまで①エアブレーキ=水平方向の進みだけ考えていましたが、②鉛直方向にも影響があると感じました。

手を振り上げると重心が浮いてしまうので、カンテを深く踏み込めない。だから良くないと。

ビデオで、手を使っている・いないジャンプをいくつもループして繰り返し見ると、明らかにテイクオフの加速が違う気がしました。

重心を浮かせずに、きっちり足でカンテを踏み込んで加速するためにも、手を使わずに飛び出したいです。

ここはまだ100%出来ていないテクニックなので、引き続き取り組みたい。


●マキシマムで腕を広げる
上空はテイクオフで突き抜けて、その後の落下のときに、ガチッと飛型をつくって安定したり風をつかまえたいので、飛び出す前にレジェンドのフォームをイメージしておきます。

すると、マキシマムにさしかかったときにちょうどそのフォームをつくれるようになります。

これまでは飛び出しと同時に腕を開いてましたが、今は手を使わずに飛び出して、その後開くことを定着させてます。


●テクニック改良の効果あり
今回、アプローチからテイクオフ、そして空中の腕の開きまでを改善したおかげか、ジャンプの調子は良いです。

体重も筋肉の柔らかさもベストには程遠いのですが、飛距離やテイクオフの形、空中フォームなどは自己ベストに近いです。

妙高K60の20番ゲートなら、無風ないし多少の追い風でもK点付近まで飛べるようになりました。

20番ゲートで強い向かい風が吹いて、大丈夫、65mまでなら立つわと言ってスタートしたら、越えてしまい立てなかった。笑 途中でやめて66m~67mくらいだったかと。

その後18番に下げても、斜め前からの風で63.5m。

従来より、アベレージが+5mくらいの感覚です。

新ビンディングの効果も大きいですが、アプローチの重心やテイクオフの加速で、明らかにこれまでも違う感覚があります。

よって、今回は一時的に調子が良いというよりも、技術自体をしっかり変えた結果だと信じたい。笑

テクニックのどこを変えたかを、自分で具体的に説明出来るので、合理的な裏付けのあるレベルアップと思いたいです。

そしてもし、また歯車が狂ってしまったら、このテキストを読んで、身体もつくりなおして、取り戻したいと思います。


●疲れてくると要注意
しかし、今から注意すべきなのが、疲れてきたとき、ストレッチ不足なとき、体重が変わったとき、筋肉が張ってしまっているときです。

こういうときは、全てが狂ってくる。

アプローチが内股になったり、ハムストリングスの張り=骨盤の返しが甘くなったり、背中が丸くなったり、頭が下がって潜りがちになったりと、悪い兆候が出てきてしまいます。

今回の合宿でも、後日自分の映像をループして見てて気付きましたが、最終日近くはまさに上記の兆候があり、このときはあまり飛べなかった。

1本だけ、目の覚めるようなテイクオフがありましたが、このときだけはしっかりアプローチで骨盤が返ってました。

このように、ベストジャンプには身体の状態も体力的にも、常に一定の状態を保つことが必要で、何ヶ月も、あるいは年間通して状態をキープするのは至難の技です。

それでも平均値、ベスト値ともに良くなってきている実感はあります。

少なくとも手応えはつかみつつあるので、このままモノにしていきたいです。







2016年5月11日水曜日

2016GW妙高合宿 - 新マテリアル編

今年のGWは約1週間まとまって集中的に飛べる機会だったので、新しいことを試すには最適でした。

また、新しいシーズンなので、いろいろ新しい道具もテストしてみたいという興味・好奇心もあり、スキーとビンディングを変えてみました。


●スキーをELANからFISCHERに
まず、スキーをチェンジ。
愛用してきたELANも好きだったけど、これまで他のメーカーのスキーを使ったことがなかったので、FISCHERのスキーを譲ってもらえたこともあり、試してみました。(高翔会の讃良さん、ありがとうございます)


●柔らかくてペラペラ!!
履いた瞬間の感覚としては、これまで使っていたELANと比べると、ペラいというか、柔らかくてペラペラしている印象でした。

だからスキーに対する信頼感があまりなくて、空中でこのスキーに身体を委ねて大丈夫かな?と思ったくらい。


●身体にフィットしやすい
実際に飛んでみると、FISCHERは空中でスキーが身体につきやすいと話できいていた通り、簡単にスキーと身体の一体感を感じました。

このぶん、空中でのフィット感はあります。

ただ、身体にスキーがピタッと付いてくるぶん、空中スピードは少し遅い感じがあり。ELANの方が速い感じがしました。

ELANの傾向としては、テイクオフ直後はスキーが寝たまま進んで、空中後半でスキーが上がってきます。

そのぶん空中スピードは速いけど、きれいに飛ばないとスキーが身体についてこないというか、少し扱いが難しくて、ストイックな感じです。

おそらくSPORT2000(=Fluege)はもっとその傾向が強いのかなと思います。


トータルとして、FISCHER大好きとまでは思いませんでしたが、そんなに悪い印象もないので、ビンディングの付け替えも大変だし、とりあえずこの夏はこのまま行ってみようと思います。


●トップ選手は独自のチューニングあり
ちなみにですが、トップ選手は自分好みにスキーの上がり方をチューニングしているので、上記メーカー別の一般論はあてはまらないです。

例えば、岡部選手が使っていたFISCHERを持たせてもらったことがありましたが、重さのバランスがすごくトップ寄りにあって、スキーが立ちにくいチューニングになっていました。自分のスキーの感覚で普通に持ってみたら、トップがカクンと下がってびっくりしました。

このスキーだと、わずかでも前に行き過ぎると、前に刺さってジャンプにならなくなってしまうけど、きれいに立てば、スキーが立たずに空中スピードが上がって、かつスキーと身体の一体感もあるという、スレスレのバランスなんだと思いました。(推測だけど)

また、葛西選手のFISCHERも、あれだけタイミングが遅れてもスキーが全く立たないのはちょっと異常だと思っていて、岡部さんと同様、もしくはそれ以上に重心をトップ寄りにしているのではと思います。あるいは、スキーを立たせない彼独特のテクニックがあるのかもしれないけど。


●ビンディングも新型に
そしてビンディングも変更しました。
カカトがスティックではなくて、滑車ぽいタイプ。新型。
http://carbon.slatnar.com/bindings/air-binding-sets/air-long-carbon-set.html



●気に入った!!
先に結論書いちゃいますが、これはいい、すごくいい。
無風が向かい風に変わる感じ。


●道具選択には検討が必要
この新型ビンディングのヒールパーツの傾き角度は、3つラインナップがあって、12°、16°、20°から選べます。

僕は傾き最大の20°を選んでみました。

新しい道具の選択にあたっては、一番早くて正確なのは実際にその道具で飛んでみることですが、そういう状況にはなかなかなりません。

ジャンプ道具はそこらへんのスポーツショップに売ってるわけでもないし、ビンディングは取外しや取付けに何時間もかかるし、スキーごと借りようとしても個人毎に長さが違うし、ブーツの大きさが違えばビンディングの位置も合わないし、、

よって、不明点がありつつも、いろいろな予想をしたり、使っている選手に聞いてみたり、最後はある程度割切りをしながら選ぶことがほとんどです。

例えば今回のビンディングも、ヒールパーツの傾きを12°、16°、20°の3種類からどれにしようか?という選択がありました。

僕は傾き最大の20°を選びましたが、あれこれ考えてみて、決めたのがこれでした。


●メリット
傾き20°のメリットは明快で、浮力UP、安定性UP(=横風耐性UP)の恩恵を最大に受けられる点です。

傾きの角度が大きいほど、スキーの滑走面が空中で下を向くので、前からの風をつかまえて、横からの風を受け流せます。


●デメリット?
しかし一方で、懸念もありました。
テレマークの難しさです。

ヒールパーツの傾きが大きすぎると、着地が難しいのでは?と思っていました。

この新型ビンディングだと、ヒールパーツが曲がっているため、カカトを上げても真っ直ぐには上がらずに、ビンディングのカーブに沿って内側に傾いて上がることになります。

すなわち、テレマークでカカトを上げたときに、強制的にヒザが内側に入る=X脚にさせられる状態になります。

よって、ヒールパーツの傾きが大きいほど、ヒザが大きく内側に入り、そのぶん足裏が外を向くことになるため、スキーが外に流れやすい傾向があると思いました。

例えば、かつてあれだけテレマークが上手だった葛西選手ですが、ソチ前後の時期は、後ろにした左スキーが外に流れる状態が続いていました。これも、カーブしたビンディングの影響では?と思っています。(この点は葛西選手本人も課題視されていて、ソチの翌シーズン終盤あたりから徐々に改善され、きれいに決まるようになってます。飛型点20点も出てました)


●僕には当てはまらない
しかし、このテレマークについての懸念は、僕にとっては幸か不幸か、あまり影響しなそうに思えました。

というのも、僕はもともとX脚気味というか、テレマークのときに後ろの足のヒザが内側に入りがちなので、自分の身体構造的にはあまり問題ない気がしました。

よって、思い切って最大の20°のビンディングを使ってみようと思いました。


●テストでは、極端なことをやるのが一番
また、いずれにしろ最大の20°がこのビンディングの良し悪しを一番感じやすいと思ったので、ハッキリさせようとして選んだ部分もあります。

基本的に、何かを試すときは、極端なことをやってみると一番ハッキリ分かりやすいと思うので、今回もそうしてみた感じです。


●実際に飛んでみた印象=素晴らしい!!
実際に飛んでみると、上手く予想がはまり、幸いにも、メリットは最大限感じて、デメリットは感じませんでした。

まずメリットとして、空中後半で、これまでに感じられなかったスキーの持ち上げがありました。

飛び終えてジャンプ台を振り返ってみると、吹き流しはだらんと下がっていて無風。それなのに、まるで向かい風を受けたような感覚がありました。

フライト終盤の風圧=持ち上げの感覚が全く違います。

ただ、これは別要因も含まれているかもしれません。

最近アプローチが良くなっているので、連動してテイクオフの方向が良くなり、飛び出しでスキーをあまり立てなくなったので、後半浮き上がる飛行曲線になっただけかもしれません。しばらくしたら、元のビンディングがついたELANで飛んで、確かめてみようと思います。

また、テレマークも全く問題なし。
むしろ、合宿中は自分史上最高のテレマークを連発出来た気がします。

結論として、この20°の新型ビンディングはかなり気に入ってます。おすすめ。


●余談:スペアパーツ
ちなみに余談ですが、ビンディングのカカトとブーツをつなぐためには、以下の写真のようなヒールクリップを使います。飛ぶ前に、このクリップをブーツにパチっとはめて、飛び終わったら外します。



このヒールクリップは消耗品なので、スペアが必須です。

着脱のたびに摩擦ですり減ってくるため、使っているうちにブーツから抜けやすくなります。もし空中で外れたら、、、とかは考えたくもない。

ビンディングの新規購入にあたっては、当然このクリップのスペアも同時購入するのですが、今回WEBカタログにスペアが見当たりませんでした。

そこで、昔から地味に鍛えてきた語学力と、会社員ならではの交渉力を活かして、スラトナーと会話をしてみました。

既存のスティックタイプ用のクリップと共用出来るのか?あるいは別途専用のスペアが必要なら、ストックはあるのかと。

すると最初は、モノはあるけどカタログには載せてないので、注文時の備考欄に書いてくれとの返事が返ってきました。

しかし、そのうち気が変わったのか、WEBに追加したよと言って、以下のページをつくってくれました。
http://carbon.slatnar.com/bindings/spare-parts/rear-binding-foam/air-clips.html

WEBカタログにラインナップされていると、他の購入者にも分かりやすいかなと思います。

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次回は2016GW合宿のテクニック編です!

2016年5月8日日曜日

2016 GW妙高ジャンプ合宿

●飛び尽くしたGW
今年のGWはとにかく飛び続けました。

例年、秋田の鹿角が4月最終週からサマーオープンするので、当初はそこに行こうかと考えていましたが、今年は雪解けが早くて、近くの妙高で合宿出来ました。

去年のGWは石垣島フィーバーしてましたが、やっぱり飛べるなら飛びたいなと思って、今年は会社員・大学生ジャンパーたちと一緒に、疲れ切るまで飛び尽くしました。


●まずは身体慣らしから
今回は、というか最近はいつもなんだけど、身体の状態はワーストに近くて。笑

4月からは会社でノー残業デーもなくなってしまい、さらに深夜22時以降勤務の自粛も取り払われてしまった。結果として、連日23:30まで、24:00まで、からの徹夜などなど、全く運動を出来ていない状態でした。

運動できていないので、体重もベストより3kgくらい重いし、ストレッチもしてなくて、ジムにも行けていないので、筋肉も硬い。

よって、今回はオーバースピード気味で飛距離を出しやすくして、楽しくジャンプを飛びながら、まずは運動できる身体に慣らしていこうと思っていました。


●楽しかったし、得たものあり
今回の合宿では、新しい経験もいろいろありました。

たくさんの仲間が入れ替わり立ち替わりで参加して、今や岡山に行ってしまったDKUくんと再会したり、5年越しでジャンプ台の管理人さんと宿で飲んでみたり、ヘルメットカメラも初めて付けて飛んでみたり、サマー開幕戦にも出て2位に入ったり。

また、約1週間まとまって飛べる機会だったので、今回の合宿テーマを2つほど設定していました。

①新しい道具をためしてみること。
スキーとビンディングを変更してみました。

②新しいテクニックを定着させること。
3月の妙高ファイナルで良いアプローチ感覚をつかめたので(Gを感じる)、その定着をはかりました。

上記のテーマから得られたことも多いので、何回かに分けて記事にしてみたいと思います。


●雪解けが早かった、妙高のジャンプ台